| オーストラリア メルボルン グリーンビルディング60Lのデザイン力 (20 Feb 04) 後藤 彰 |
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グリーンビルディング60Lという建物はメルボルンの中心街にある。ビル全体がエコロジカルにデザインされており、持続可能なライフスタイルというものを体現していて、なおかつ経済的という非常に興味深い建物だ。僕はこのビルに入っているACF(Australian Conservation Foundation)という環境団体のコーリーにビル内を案内してもらった。外から見ると何の変哲もないビル、内部はちょっと薄暗い感じのする開放的なオフィスビルというのが印象だった。しかし、コーリーの説明で一つひとつのデザインに緻密な計算がしてあり、面白い仕掛けがたくさん潜んでいる事が分かってくる。「おお、そうきたか。」「Wooh!」といった反応が自然と出てくる。 細かな仕掛けを見ていこう。 |
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![]() ●建築資材建物に使われている木材やレンガ、鋼鉄はリサイクルされた素材が多い。利用木材の80%は再生資源だ。階段の手すりや階段の板、窓枠、床の一部はリサイクル素材なため質感がそれぞれ違う。でも、それが良い味を出している。ところどころの壁に断熱材としてはめ込まれている赤レンガも全てリサイクル素材だという。なお、レンガの洗浄には化学物質を一切使用していない。建築に必要だったコンクリートは60%が再生原料から作られていたという。コンクリートの強化に必要な鋼鉄もリサイクルされたものだ。 何となく歩いていたら気が付かないが、床にも注目が必要だ。オフィス部分のカーペットは30センチ四方ぐらいのものが敷き詰められていて、磨耗した部分だけ交換するシステムになっている(右の写真を参照)。ポール・ホーケンらが『自然資本の経済』(日本経済新聞社 2001年)の中で紹介している システムだ。この仕組みなら資源の節約と経費の節約が合致する。簡単なキッチンスペースの床はコルクボードだ。近くにはオーストラリアではよく飲まれるワインのコルクが集められている。こうして集めたコルクを床の素材にしてしまうのだ。興味深かったのは、こういったデザインの仕方と発想が企業をも動かしている事だ。回収したコルクを再利用するためには、一定の化学物質を利用しなければならないというのが業界の言い分だった。「それなら契約は出来ない」というグリーンビルディング側の姿勢に企業も研究を重ねた。そして、化学物質を使わなくてもコルクの床を提供できる技術革新を起こしたと言う。それこそ社会的技術革新(social
innovation)だ。コーリーは「企業とも僕らは協力していくんだ。こっちが要求をすることで企業も変わっていくからね。それが企業側から長期的に見れば新しいマーケットの創造につながっていくはずなんだ」と言っていた。「まだまだ流れとしては小さなものだけれども、エコロジカルにすることで経費の削減にもつながっていくとして注目され始めている」とも語っていた。 |
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●低電力消費 ![]() オフィスは自然光を最大限取り込み、電灯を付けなくても支障がないようにデザインされている。ビルの中央にある吹き抜けは光が遮断されない工夫でもあるようだ。入った時の印象は薄暗いものだったが、仕事をする上では何ら支障のない明るさではある。もちろん、必要な場合には電灯を付けるが、これが省エネ型の電球である事は言うまでもない。また、夏は暑く、冬は寒いメルボルンだが、空調は最小限しか使わないという。夏場は空気の流れが確保され暖かい空気を外へと逃がす。逆に冬場は太陽光を目いっぱい取り込み、室内の温度を保つ。これらの室温調整はコンピューター管理されているとのことだ。「ここ1年で冷房が動いているのを見たのは2回ぐらいかなぁ」とコーリーは言う。ジンは「でも、冬場のオフィスは寒すぎるんだよねぇ」とつぶやいていた。 照明に使われる電力は通常のオフィスビルと比較して80%も少ないと言う。また、ビル内にある設備や空調に使う電力は同じ規模の一般的なビルと比べて60%少ないということだ。さらに電力の大半は太陽光発電などのグリーンエネルギーを利用しており、二酸化炭素の排出は統計上ゼロに近いという。 |
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●水 ![]() グリーンビルディングの地上階には巨大な10,000リットルの水タンクが2つある。このタンクに屋根と屋上から拾う雨水を溜め込むのだ。溜め込まれた雨水はフィルターを通されて飲料用やキッチン、トイレ・シャワーなどに利用されている。雨水を有効利用するため、水道管から供給される水は一般的なビルが消費する量の10%ほどしか必要としないという。 水を必要としない仕組みも充実している。男性用トイレの小便器は何と水を流さない仕組みになっている。内部にはなにやら特殊なオイルが入っているらしく、水を流さなくても問題がないとのことだ。実際、匂いはまったく気にならないから不思議だ。センサーで自動的に2回も水を流すことがある日本の仕組みとは大違いだ。 |
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●その他 他にもダンボールで作られた机を普通に使用していたり(強度は普通の机と同じ感じだ)、イスもリサイクル品だったり、なるべくエレベーターではなく階段を使うようなデザインにしてあったり、オフィスを開放的にして空気の流れを妨げないと同時に消音・防音の工夫もかなりたくさん施してあったり、シャワー室や仮眠室の完備してあったり、自転車の駐輪場が併設されていたり、地上階には水生植物が置かれており水の流れる音が常に聞こえていたり、とにかくいろいろな仕掛けが張り巡らされている。 |
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![]() この部屋は電気が付いていない。 太陽光だけでこれだけ明るい。 |
![]() 屋上の床が取水口の役割を果たす。 樋ではなく、床全体で雨水を集めるのだ。 |
![]() 室内にある緑。 水の流れる音は清涼感をもたらす。 |
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「気持ちの良さ、環境持続性、経済的合理性」 「そこまでするか」というこだわりよう。でも、ここまで徹底されていると見ていて気持ちが良い。そう、グリーンビルディングは実に「気持ちが良い建築」なのだ。そこで働く人もオーストラリア特有のオープンさを持ち合わせており、職場には笑いと余裕が絶えない感じがする。狭いオフィスに閉じ込められ、空気が悪く空調がガンガン稼動するような職場よりも、快適なオフィス空間の方が仕事の効率や能率も上昇する。オフィスの快適さと仕事の能率、そして環境的な持続性、そして経費の削減が合致しているのだ。 印象的だったのは第一にデザインの威力だ。建物は単なる入れ物や箱ではない。緻密な計算と発想力によって、その建物の機能や快適さは随分違ってくるものだ。まったく整理整頓がなっていない僕の部屋とは大違いだ。自分の部屋を掃除して快適な空間にデザインする事から始めようとも思わされた。 第二に、ACFのようなNGO団体が快適な建物にオフィスを構えているという点だ。あまり、日本ではお目にかかれない気がした。なお、グリーンビルディングには16団体ほどがオフィスを構え、150人ほどが関わっていると言う。そして、約半分の団体は環境問題や社会問題に取り組んでいる市民社会セクターなのだ。だから、階を移動するだけで取り組んでいる環境問題の相談が出来たり連携が出来たりするようになっている。また、一般的に資金が足りているわけではない市民社会セクターが快適なオフィスを持ち、能率の良い仕事をしながら、電気料金や水道料金が押さえ込める。 第三に何度か書いたが、エコロジカルであることとエコノミカルであることが合致していることだ。エコロジカルであることを目指してこういったビルを創る人があっても良いし、仕事の能率と経費削減という点からエコノミカルであることを追求したら結果的にエコロジカルになっていくビルがあっても良い。グリーンビルディングは前者だと僕は思う。そして、この建物がひとつのモデルとなれば、経済的な合理性を追求した結果の環境的持続性ということも受け入れられていくだろう。 こういった建物が日本のどこかにもあるのだろう。日本では、市民社会セクターが都心で持つというのはやはり難しいかもしれない。だが、既に建ってしまっている建物でも工夫を凝らし体系的なデザインをすることで快適さは増し、経費削減という経済的なメリットも生み出せる。それは、ちょっとした工夫と知恵を使うことなのかもしれない。と、言いつつもまずは自分のカオスな部屋を何とかしなければ。。。。。 bibliography Krockenberger, Mike (2003) 'Building Our Hopes and Dreams', Habitat Australia 31(1): 11-14. Noble, Kate (2003) 'DIY Green Office Programs', Habitat Australia 31(6):10-11. ホーケン、ポール他 (2001)『自然資本の経済』東京:日本経済新聞社. *メルボルンを訪問する方は是非ともグリーンビルディング60Lを体感してはいかがだろう。 事前に連絡をすればボランティアがガイドをしてくれる。詳細はHPまで。 |
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