オーストラリア マレーニー訪問
(23 Feb 04 〜 26 Feb 04)

後藤 彰

クレジットユニオン(信用組合)

 マレーニーの町にはMaleny Credit Union という信用組合がある。一見すると単なる小さな町銀行だ。けれどもクレジットユニオンは、地域に根ざしてその土地にお金の循環させる優れた仕掛けとなっている。発足はマレーニーに住んでいる人々が家を建てたい、ビジネスを始めたいといった時に既存の銀行からは融資を受けにくかったことに起因しているという。

   一定の返済能力が「ない」とみなされれば銀行は融資を控える(なお、その隙間を日本では消費者金融という名のサラ金・高利貸しが埋めている)。お金が借りられない、大きな買い物や新しいビジネスの立ち上げが出来ない。「じゃあ、皆でお金を出し合って自分たちの銀行を創ってしまおう!」ということになったという。銀行をコープ形式で発足させたということだ(現在は法律の問題などもあり、形式としては協同組合ではないということだ)。
   原則として誰でも出資可能だが、融資は地域に役立つもの地域に関連するものだけにしているということだ。地域にお金を積極的に融資し、お金の循環を創り出す。そんな町銀行が果たす役割は大きい。人々から集めたお金を「利潤」を獲得する事だけ考え、大きな外資企業や超国籍企業に融資していては地域からはお金が出て行く一方になる。お金の循環が干上がる。雇用が減る、生産も消費も落ち込む。逆に、地域に積極的に融資をすれば、そこで雇用が発生し消費と生産も促される。人々の暮らしを支える経済がお金のまともな循環によって機能することになるのだ。
   町の住人に融資するとういことは、融資先の顔が見えるということ。だから、杓子定規に基準を決めて融資の可否を判断という事にはならない。その人と顔を突き合わせて話し合い、融資や返済の条件を交渉するようなこともあるという。







  面白い融資プランに「Enviro Home Loan」というものがある。Eviro というのはEnvironmental=環境ということ。つまり、環境に配慮した家に対する融資ということだ。一定の環境配慮がある家の建設に融資をしますよ、という仕組みだ。
具体的には
1)エネルギー効率が良い事(BERS=Building Energy Rating Schemeという査定基準があり、その査定で5つ星(5Star)を獲得することが条件となる)
2)最低22000リットルの雨水タンクを設置し、家事などはそれでまかなう事(マレーニーの郊外では水源はほとんど100%雨水利用でまかなっている。海から町までの間に工場などの汚染源がないため、雨水はかなりキレイらしい。もっとも、町の中心には水道が引かれている)。
3)水使用量の少ないトイレのシステムとシャワー(dual flush toilets and AAA rated shower roses 具体的に何かはちょっと不明)を設置する事。
ということが条件になっている。さらに面白いのは、家はもちろんマレーニーに建てられることが条件で景観なども吟味されるという。
 ただ単にお金を貸せば良いという発想ではなく、コミュニティの発展や環境に配慮した建築の発展にも視点が及んでいるところが面白い。さらに、そういった家を建てると借りる利率が有利ということだ。環境に関心がなくても、利率が有利ということで家を建てたら結果として「エコハウス」になっていくという逆転の発想も埋め込まれている。
 
クレジットユニオンの預金利率は非常に高い。
写真の数字は利率だ。
左から3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月となっている。
クレジットユニオンへの投資・預金は誰でも出来る。
ヘッジファンドなどに流れるようなホットマネーと
こういったコミュニティに還元されるスローマネーとの
間には大きな違いがある。
 クレジットユニオンが出した黒字はどう処理されるのだろうか?それは積極的にコミュニティに還元されるという。そのコミュニティにとって公共性があることがら(パブリックなことがら)にお金を寄付したりするという。また、コミュニティの個人のためにもお金が還元されるという。具体的には公園を整備したり、若いアーティストに発表の場を提供したりということになるのだろう。
 こういった動きに政府は敏感に反応したという。何故か?本来政府が担うパブリックな役割を町銀行が積極的に果たしているからだ。それでは、政府の面目丸つぶれだ。そこで、政府が町銀行のパブリックな仕事を資金的に応援するということも出てきているらしい。また、ベンディコバンクという比較的大きな銀行もマレーニーのクレジットユニオンに感化されて自身の経営黒字をクレジットユニオンのような地域銀行の設立に積極融資し経営面でもサポートをするということを始めているとのことだ。
預けたお金が地域を循環する。それでコミュニティが発展する。お金を預ける事が地域の発展になる。素敵な仕組みだ。でも、そもそも金融業というのはそういったものだったはずなのかもしれない。 

始めに コープ / クレジットユニオン / LETSシステム / マレーニーを通して考えるコミュニティ

©GOTOH Akila 2003-

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