オーストラリア マレーニー訪問
(23 Feb 04 〜 26 Feb 04)

後藤 彰

LETS システム

   LETSとは「Let's Go!」のLETSではない。一般的にはLocal exchange trading systemとかLocal economic trading systemとかの略称だ。マレーニーでは、これをLocal energy transfer systemと呼んでいる。地域で[地域の]エネルギーが流れる仕組みということだ。いわゆる地域通貨のこと。
   マレーニーの町ではコープを維持するためにボランティアベースでいろいろな仕事が行われていた。自分の町を素敵なものにするためにたくさんの人がボランティア活動をすることが根付いていた。そのエネルギーの流れを既存のお金ではない補完的な地域通貨で評価し始めたのだ。例えば、今までは無償でやっていたコープカフェの手伝いとかに地域通貨バニャ(Banya)が支払われるようになる。日本語を教えられる人は日本語を教えたり、料理を教えられる人は料理を教えたりする。クッキーを売ったり、絵葉書を売ったり、ペンキ塗り、掃除、買い物代行、マッサージ、話し相手などなど、特別な技能をそれほど必要としない諸個人の営みがエネルギーの流れとして評価されるのだ。ある意味で、「家族という尺度の延長だ」ということだ。今日料理を作ったからいくらとか、皿洗いをしたからいくらとか、家族の中でのエネルギーの流れは決して金銭換算できるものではない。似たようなエネルギーの流れを地域通貨で表しているということだ。
  「この地域通貨があるから生きていける」という老人や障害者もこの町には住んでいるという。自分が出来る事をコミュニティに提供し、それに対して評価を得る。その地域通貨を使って、財やサーヴィスの提供を受けるというエネルギーの循環が生じているということだ。
マレーニーのバニャが持つ特徴として以下のポイントがある。
○地域通貨はチケット制で額面(数字)がない。その取引の際に、取引主体が額面を書き込む。これはチケットを各自がコピーするだけで地域通貨が生み出されるという使いがっての良さがあるという。
○収支の集計を事務所で行っている。取引の記録は事務所で集約され、どれだけのエネルギーが動いているか、エネルギーの動きが偏っていないかをチェックする事ができるようになっている。なお、この集計作業をやっている人の報酬は地域通貨で支払われているという。
○取引の報告がいつでも出来るように町中にポストが設置されている。ファックスや電話で報告という煩瑣な行程ではなくて町に行ったついでに投函できるというメリットがある。
○他の地域で利用されている地域通貨と互換性があるInter LETSシステムを採用している。他の地域で獲得した地域通貨もバニャと同じように使えることで幅が広がるということだ。
   

これが額面が書いていない
書き込み式のバニャ。
一見、単なる紙きれだが、
立派な地通貨だ。

これが取引報告を受け入れる
ポストだ。この日はまだ何も
入っていなかった。
 
 こういった特徴を持っている地域通貨はマレーニーだけではなく、他の諸地域にもあるだろう。では、マレーニーでは何故特別に上手く機能しているのだろうか?そのヒントは町の住人が「マレーニーの町をこよなく愛している」ということではないかと思う。マレーニーのことを説明してくれた人たちも同じことを言っていた。金銭的なプラスマイナスという基準で考えるのではなく、コミュニティのためという基準で考えて行動をしているようだ。それは自分の住んでいる町をもっと素敵にしたいという気持ちなのだろう。
 地域通貨は溜め込むのではなく、どんどん使うことが大切だ。それに伴って財やサーヴィス、エネルギーがコミュニティを駆け回る。そして、コミュニティが活き活きしてくる。そんなモデルがマレーニーにはある気がする。

始めに コープ / クレジットユニオン / LETSシステム / マレーニーを通して考えるコミュニティ

©GOTOH Akila 2003-

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