愛知県田原市田原町
田原は菊とキャベツの産地
専業の若手や中堅がゴロゴロいる。20代の若い人もたくさん就農している日本でも珍しい地域だ。
専業地帯のひとつの特徴は「農業はカネを取る手段」という考え方が強いこと。農業で食っているのだから当然の意識なのだが、時として「カネ」が中心の論理になり過ぎる。作物がカネになるモノに見えてきたり、「カネ」にならない、自給の野菜などは趣味の園芸として切り捨てられたりする。「米も野菜も全て買ってるよ。その方が安いからね」というフレーズも何度も聞いた。でも、中にはしっかり自給作物を作っているバアちゃんジイちゃんがいる。
野田という地区を回っていた。カーネーション団地があり、菊専業やトマト専業がいる地区。元々田んぼだったところに細々と野菜が植えてある畑があった。そこで、ばあちゃんが作業をしている。何気なく近づいて話をする。「これは、自分の家で食べる分の野菜を遊びで作っているんだよ。儲からんお遊びだって、息子にはバカにされてるんだけど。ウチはカーネーション農家だけど、毎日ハウスの中で作業ばかりしていたらおかしくなっちゃうじゃんねぇ。たまには、こうしてお日様の下で農作業をするのが私は好きなのよ」と。

ばあちゃんは、僕が見たことのない作物の葉っぱを摘み取っていた。「何ですかこの花は?」と聞くと、嬉しそうに「ゴマ」と答える。

え、ゴマってこんな風になっているんだ。初めて見た。何でもばあちゃんはゴマが好きで家族が一年食べる分をこうして作っているのだという。「健康にも良いしね。炒りたてを食べるんだよ。美味しいよ。ウチの食卓にはいっつもゴマがのっているんだ。嫁も料理に使ってくれるしね。まあ、遊びだって言われるけど良いんだぁ」と。次の日同じ畑を見ると、ゴマは全てきれいに刈り取られていた。刈り取った後は、新って天日に干して、食べる都度炒るという。儲からない遊びが、家族の健康を支えている。

↑この中にゴマが入っている。自然の構造は神秘的ですらある。