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農民(とノマド)の叫び その2

彼の話を聞いていて思ったのは、「ああ徹底した悲観論だ」ということ。農民から悲観論を聞くのは日常茶飯事だけども、いろいろな活動をしていて今も農業委員をしながら地域のことを考えている人から発せられる言葉には重みがあった。けれもど、彼の悲観論をそのまま受け入れる気持ちにもならなかった。
「飯野さんが言っていることも確かに分かります。けれども、世の中そう暗い話ばかりではないはず。いろいろな農村を回っていれば活気のあるところにも出会いますよ。」
「とにかく、悲観論を言っていても始まらない。暗くなっていくだけです。最近よく言われていることに「ないものねだりではなく、あるもの探しへ」というフレーズがあります。アレがないコレがないと嘆くのではなくて、足元を見つめれば様々な宝物はその地域に転がっているはずです。平鹿にだって、美味い米や雑穀、素晴らしい景観、温和な人びとなどなどがあるじゃないですか。」
「ここにある閉塞感と言いましたけど、都会にだって充分すぎるほど閉塞感がありますよ。日本全体では年間に3万人以上が自殺するらしいです。東京で働く僕の友人は1日14時間働くことなどざらで、会社に泊り込んだり良くしています。どんどん眼つきが鋭くなっていき、大丈夫かなぁ、と思ってしまう友人もいます。人と人とのつながりや支え合いが寸断されている中で、それこそ都会の閉塞感や不安といったらないですよ。」
「今、農村空間が持つお金に換算できない豊かさが注目され始めています。若者が農村へ向う動きや、農的な暮らしへの関心の高まり、食への意識の高まりなど。そういった人間にとっての豊かさの本質的な根源が農村空間にあるのかもしれない。そんな考え方も出てきています。」
「大きな政治的仕組みに対してモノを言うのは大切だし、継続してやっていかなければならないことでしょう。けれども、同時に自分の生活の在り方、生き方自体からも変化させていかなければいけない。まずは、自分の生活を愉しむこと、充実させること、そういったことも大切ではないか?」
などなど、すごく無責任で地に足の付いていない言葉だと思いながら、それでも僕は何故か語っていた。

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「君の言っていることは分かる。けれども、ここのどうしようもない現実の前ではねぇ。。。本当にどうしたら良いのやら分からないんだ。もうダメかもねぇ、って思っちゃうよ」と飯野さん。
その後、双方が同じことを別の言葉で繰り返し語っていた。「限界が来た。もうダメだ。」「いや可能性はある。何とかしていこう。」という形で。
双方が疲れてきたところで、僕は聞いてみた。「マサトさん、百姓仕事やっていて愉しいですか?愉しいでしょ?」と。
彼は少しの間を置いて、語ってくれた。「この間、宇宙飛行士の毛利衛さんが来てくれてさ、宇宙から見た地球の話や宇宙の話をしてくれたんだ。そん時、オレは思ったね。宇宙に行かなくても、日々宇宙を感じてるんだなってさ。例えば、田んぼでメダカを発見した時、キレイな水にしか棲まないハリザコという小さな魚を見つけた時、オレはそこに宇宙を見る気分になるんだぜ。ここのキレイな水や景観の中で仕事をしていてそりゃ愉しいと思うさ」と。ここでも、悲観論が出てくるようならそれまでだと思っていたが、そうではなかったので僕はほっとした。
「今後は、農協や行政に過度に依存せず、異業種間の交流や若い人の知恵工夫を借りて何とか閉塞感を乗り越えていきたいと思っているんだ。農家は良い作物を作ることはできても、それを売ったりアピールしていくノウハウがない。そこまでやれと言われても正直ムリだ。だから、センスの良い若者にも手伝ってもらって、さまざまな分野の人と交流しながら何とかこの地域を支えていきたいと思っているんだ。それと、もっともっと消費者に対する働きかけってのが必要だね。エンドユーザーが変わらなければ生産するほうはどうにも出来ないからさ。そのためには、メディアの役割は大きいはずだ。君にも期待してるぞ」最後はそんな少し希望とも展望とも取れるような話もしてくれた。
昼飯も食わずに2時間ぐらいはぶっ続けで話していただろうか。僕は少し朦朧としていた。「いやぁ、これほど農家と本音で語り合ったのは初めてです」
「ん、本音?こっちは全然本音じゃないよ。本音でしゃべったら、もっと厳しいこと言っちゃうもんね」と彼はニヤリとしていた。

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「こんなカッコで悪いなぁ」と言いながら写真を撮るのを許してくれた。

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2005年09月27日 22:38に投稿されたエントリーのページです。

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