「越後人はバカだよなぁ、本を買ってやった上に、米までくれてやるんだから」と苦笑いをしながら、越後人の小林春男さんは僕に米をくれた。そして、真剣な顔で「いいかぁ「美味しかったです」とかそういったありきたりの感想じゃなくて、しっかりした評価をこの米に下してくれ。ちゃんと手紙を書いてくれよ。約束だ、頼んだぞ」と付け足した。

実に美味いおにぎり。その正体とは?↓↓
6月に僕は上越市に宿を取り、糸魚川市を回っていた。根知という地域に入った時に出会った稲作農家が小林さんだった。65歳ぐらいの彼はゆっくりとした口調でいろいろなことを話してくれた。米作りにかける想い、ヤギを飼いたいこと、豆腐やチーズを手作りしたいこと、本を読むより漫画の方が好きなことなどなど。
小林さんはこだわった米を作り、農協出荷にはせず自分で販売している。稲刈りが終わった後に大量の米ぬか(1反に160キロほど)を田んぼに撒いて、来作の準備をするのだという。土壌の改良と発酵による稲わらの処理、来作への肥料効果などさまざまな役割が散布に込められている。その米ぬかと一口に言っても、精米度合いによって質が違うことを教えてくれた。彼は酒の醸造元から2種類の米ぬかを仕入れ、それを田んぼに入れる。酒米は削り度合いが普通の米と違うので、いろいろな種類の米ぬかがあるのだ。そして、彼はどんな米ぬかにどういった特徴があるのかを掴んでいるようだった。田んぼの除草に米ぬかを利用する「米ぬか除草」という技術があるのだが、それにも大きな関心を示していた。「除草剤は減らしたいんだ。今は使っても問題ないといった認識になっているが、孫の代になってから「いやぁ、あれは問題だった」と言われるような後ろめたい気持ちが消せなくてね。これまでも、後々になってから「問題だ」となった農薬なんかが多いんだ。だから、なんとしても減らしたいんだ」と。だが、なかなか実際にはそこまで踏み切れないというジレンマも抱えている。化学肥料や農薬を控えた栽培をするので、収量はそこまで上がらないが「まあ、それでいいと思っているんだ。周囲からも「変なつくり方をしているとか」いろいろ言われるけど、自分の正しいと思っていることをやっているんだ」と語ってくれた。
他にも、ヤギを飼ってチーズを作る夢や大豆を栽培して豆腐を作る夢も持っていた。「ヤギはなぁ、乳が丸みを帯びたものではなくて、山型に尖っている方が出が良いんだぞ。僕が子どもの頃はどこの家にもヤギがいてねぇ。近々ヤギを飼ってさ、その乳でチーズを作りたいんだ」と眼を本当に少年のようにキラキラさせて語ってくれた。
そんな出会いからしばらくして、僕は思い出したように「もらったお米の感想」を夏ごろに小林さんに送った。すぐに送れば良かったのに、米の印象もどこかちょっと曖昧になってしまってから、遅くなって申し訳ないと思いながら。
昨日実家に戻ると、小林さんから新米が届いていた。「今年の米です。食べてみて下さい。ヤギは4日に来ます。近くに寄ったら訪ねて下さい。チーズもいかがかな?」といった内容。酔っ払いながら書いたのだろうか、ヨレヨレの字で。「小林」というサイン入りで。「越後人はバカだよなぁ。また懲りずに米を送ってやるんだから」とつぶやきながら、苦笑いしながら手紙を書いている小林さんの顔が鮮明に浮かぶ。
「米、早速おにぎりにしました。お世辞抜きでおいしいですよ。粘りもあるし、おにぎりにして冷めてからも味がしっかりしている。甘味もありますね。食べている僕は幸せな気もちになります。根知の田んぼの風景が浮かびます。」

コメント (2)
まいど!
読んでて、おにぎり食べたくなりました。
コシヒカリ系のお米は特にそうなんだと思うけど、冷めたときのうまさがたまりませんよね。
歯ごたえと甘みが。
真夏に、縁側で食べたら病みつき
きりっと冷えたお水があれば、もうかんぺき。
「うまい米が食いたい」っていう情熱と孫に恥ずかしくない米づくりが両立しているのもいいな。
僕も一度会いたいなあ。会いにいったら会ってくれるかな。
投稿者: SaY | 2005年11月12日 11:25
日時: 2005年11月12日 11:25
どうも。
コメント返しです(初の試み)。
おにぎり、本当に美味しかったんですよ。自分で握ったからかな?実は、食べきれずに(5つもつくったから)次の日の昼ご飯に道の駅で食べたんですが、我ながら美味かった。
米文化ってのは、奥が深いですよね。
小林さんに会いたい場合は、糸魚川の根知地区に行って下さい。暇なら相手にしてくれるかも。
でも、多分ご自身の近場で百姓を探せば、たくさん魅力的な人がおるはずですよ。
投稿者: akilagotoh | 2005年11月13日 00:01
日時: 2005年11月13日 00:01