過疎化・高齢化・少子化・箱への認識

nomadnomad
岩手県北 一戸町・軽米町

後藤 彰
 
「日本の農村は元気だ!」といった話に素直にうなづけないのには、見てきた現実がさまざま語りかけてくるからだ。「若い」と言う単語でどういった人を思い浮かべるだろうか?農村では50歳でも「若い」。40代なら地域をこれから引っ張る可能性を持っている若手だ。僕の感覚だと60歳にならない人は「若い」というカテゴリーに入る。そして、一般的に言われる若い人は農村では珍しい。「ここは若い人間はいねぇんだ。年寄りばっかだぁ」というフレーズは何度となく聞いた。過疎化。「ここには仕事がないから」というのもいつも聞くフレーズだ。直売所が仕事場になるか?すでに書いたようにそれだけで食っていける人はほとんどいない。ある程度の貯えや年金などがある人はどっこい生きていけるが、そういった後ろ盾を持っていない20代や30代の若者には厳しい。農村にふんだんにある「食」という資源を使って、仕事起こし・仕事づくりをやっていけるかどうか。若者がそれで食っていけて地域に根付けるかどうか。気になるところだ。実際に、村で若者を見ることは稀だ。子どもの数も減り、小学校が廃校になったりもしていく姿も目の当たりにする。少子化。
 人が少なくなれば、田畑が荒れていく。耕作放棄地なんていくらでも見ることが出来る。田んぼも放っておくと、草がぼうぼうになって樹すら生えてくる。「10年後にはこの風景もどうなっているか分からねぇなぁ」とある人はつぶやいていた。耕作放棄地は増え、人も減っていくだろう。
そういった現実がある中で、お気楽に「農村は元気だ!」と手放しで思えない。

 岩手の農村を駆け回っていて、「自分が押し込められている箱(構造)に対する認識が希薄だ」と何度も思った。過疎化や少子化、農作物の価格下落、法人の農業への参入と担い手育成という政策などなど。農家はどんどん追い詰められている。そんな箱の中で「日本の農業はもうダメだ」「未来がない」といった「つぶやき」もたくさん拾った。政策として進められていることは、大きな規模で農業が出来る認定農家などに土地を集約させて、小規模農家には離農してもらう流れだ。大きな箱はFTAやWTOとなり、農産物の自由化を進める。競争に勝つために効率的な農業生産が進められる。昔は自家採種していただろう種も、種子会社に握られ買い続けることになる。遺伝子組換え種子も徐々に拡がりかねない。「10年後にどうなっているのか」は押し込められている箱からも考えなくては見えないし、変化も起こせないだろう。
 

ムンバイではインドの農民は相当怒っていた。
人の生活を破壊する経済の仕組みや
政治のあり方に。
 僕が見たオーストラリアの農家やインドのムンバイで遭遇した農民達は箱への意識が明確にあった。怒りをストレートに表現していたし、箱に対して自分の考えを持っていた。「世界は売り物じゃない」とか「遺伝子組換え技術は要らない」とか。他方で、僕が出会う農家は日々の作業に追われ、生活に追われている感じがする。「忙しい」。変化する社会や世界をただ受け入れているようにも感じられた。後手後手。悲しくも、自分たちの生活や人生、生き方さえも何かに委ねてしまっているように見える。そして、つぶやく「しかたねぇ」と。
岩手  母ちゃんパワー  ホントに元気か?


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