| ビビッド耕野 後藤 彰 02/Nov/04 update |
|||||||||
丸森町の中でも最も平地が少ない中山間地に耕野がある。「一番広い平地は中学校の校庭ですよ」と冗談交じりに言われるぐらいの場所だ。耕野に向かう途中で「ビビッド耕野/やしまや トイレ たばこ ガソリン ここからXキロ」という看板をいくつも眼にする。日用雑貨や食料品、丸森の特産品、産直野菜などを扱っている個人商店だ。産直野菜の部分がビビッド耕野で日用雑貨などがやしまやの管轄に一応はなっているようだが、渾然一体としている。店の中にはイスとテーブル、お茶菓子、お茶・コーヒーなどが並んでいる。「ちょっと休んでいきなさい」とお茶を出してくれる空間になっている。地元の人も出たり入ったり、座ってお茶をすすったりおしゃべりをしたりというゆっくりとした平和な時間が積み重なっていく。その店で八島哲郎さんに出会った。
哲郎さんは耕野の地域づくりに対して真剣さを持ちつつ愉しみながら取り組んでいる人という印象を持たせる。地域のこと、今取り組んでいることなどさまざま話してくれた。お客さんが出入りするので所々中断しながら。。。 耕野は人口1000人ほどの集落。小学校には24戸36名の生徒がいるだけだ。「もっと真剣に地域の課題に取り組まなきゃなんだよなぁ」と哲郎さんはつぶやいていた。丸森町は旧村丸森と筆甫に集中的に地域おこしの公的資金を使っているらしい。クラインガルテンのきれいな建物は丸森にある。耕野や大張にはなかなか補助や公的支援が回ってこないようだ。そういった中では自分のような一般市民がしっかりやるしかないということだ。彼はTVやラジオ、雑誌などあらゆるメディアを利用しながら様々なことに取り組んでいる。 地域おこしや村おこしはやはり地域にある資源をフルに活用するのが良い。耕野でもタケノコと干し柿がメインだ。 「耕野のタケノコ」と言えば名が知られている。<鮮度が良く、柔らかく、美味い>という点が市場で評価されていて一種のブランドになっているという。鮮度を保つために農協を通さずに素早く市場へと出荷するなどの手間と苦労もそこにはある。タケノコは勝手に生えてくるイメージがあるが、適切に肥料をやったり間伐をしたりという手入れも欠かせないという。最近は竹を砕いて繊維状にして竹林に戻してやることも実験的に行っているという。そういった一つ一つの作業や工夫が「美味しい耕野のタケノコ」を支えている。 そのタケノコも出荷中心のものから観光も組み入れたものへとシフトしてきている。春先のタケノコ掘りツアーは17年目になる。5月頃のタケノコシーズンになれば12日間ぐらいで800人ぐらいのお客さんに来てもらっているという。「最盛期はスタッフが昼ごはんを食べる暇がないぐらい忙しいですよ」とどこか嬉しそうだ。「掘ったタケノコをその場でスライスして食べる<刺身タケノコ>なんかも結構ウケルんですよね」。タケノコ堀りとタケノコ三昧の食事が付く日帰りツアーだ。 11月の秋には耕野のもうひとつの特産である干し柿作りのツアーも組む。お客さんには朝来てもらい、干し柿作りをやる。昼ごはんを食べてもらい午後解散するというペース。一ヵ月後に干し柿が仕上がったらそれを自宅に送付してもらえる。 「春に来てくれたお客さんがまた秋に来てくれるケースもあるんです。一年に何度も耕野に来てくれると本当に嬉しいですね。」その感謝の気持ちを示すこともしている。10回以上来てくれた人を表彰するというのだ。その賞状は丸森特産のシルク和紙で作り、竹の筒に入れて贈る。県知事がそれを見て、宮城国体の賞状にシルク和紙を採用したという逸話もある。
他には個人的に「カキカキ(柿牡蠣)」交換もやっているという。「ある時ラジオで『うちにある柿を送るから、海沿いで牡蠣が余っている人はカキカキ交換をしませんか?』と呼びかけたんです。返事はなしのつぶてだったのですが、しばらくしてから多賀城市の人が連絡をくれて以来カキカキ交換をして交流しているんです。売り買いやお金の問題じゃなくて、お裾分けのやり取りですよね。何より愉しいし、双方が嬉しいんですよ。柿以外の野菜を送ってやったりもするんです」。 こういった互酬的な感覚はビビッド耕野の直売所にも見られる。普通は直売所というと出品するメンバーが交代で店番・会計などをする。が、ビビッドの場合は「やしまや」の店舗がそれを負担している。手数料も大して取っていないし、第一出品者がつける売値が安い。大根1本50円とかだ。労力の割には「やしまや」への見返りは少ない。が、哲郎さんは次のように言っていた。「採算から見れば赤字になりますね。でも、地域の人が元気になってくれればそれで良いのかなと思っているんです。今まで捨てていたりした野菜が売れる、評価されるという経験は地域の人にとって良い刺激になりますしね。巡り巡ってやしまやにもお金が循環してくれば良いのですが、今はまだ、ね。ハハハ。」 過疎化、中山間地など耕野を取り巻く条件は決して明るくない。でも、そんな中で真剣にかつ愉しみながら地域のこと、何よりもそこに住む人々のことを考えて走り回っている。そんな素敵な印象を僕は受け取った。今後は日帰りのツアーだけではなく、滞在型のグリーンツーリズムへと発展していく可能性を大いに秘めている。もっと人々が休暇をしっかりとって、人生を愉しむことを理解して、ホンモノを志向すればこういった山間地もより元気になるだろうね。
|
|||||||||
| 丸森はまるごと面白い / 大張なんでもや / ビビッド耕野 / ドン詰まりは最先端 / まるごとどう生かす? |
|||||||||