| 大阪府豊能郡能勢町 販路はひとつじゃない 後藤 彰 Sep/13/04 up |
|||
| 大阪、京都、神戸といった都市に近いということはそれだけ消費地に近いことを意味している。野菜を作って消費者あるいは消費地に届ける。そのルートが能勢町にはさまざまあった。 僕がこれまで巡ってきた中山間地は往々にして市場が遠いため、農協を通した共販が主になる。すると、「農協と普及所に言われた通りに作っている」というあまり魅力的ではない言葉も多々耳にする。農協に出す場合に重要なのは品質ではなく規格になる。形や見てくれだ。規格は箱に入りやすい大きさだとか、半分に切った時にナベに収まる大きさとか、そういった都合で決まることも多いらしい。野菜の味が質的に良いものをこだわって作るということが大して評価されない。「とにかく量を出せ」という指導方針の農協も岐阜にはあった。 能勢町で良く聞いたのは「ここは農協が弱いから、農家が独自に工夫して販路を創っているんだ」ということだ。ある人は「弱いどころか、農協はほとんど役にたたねぇ。期待もしてねぇよ」とまで言っていた。 農協を通さずに、自分の家先で100円野菜を売る人、直売所で売る人、有機野菜の宅配をする人、宅配業者に出荷する人、能勢農場という任意市場に出す人。いろいろだった。
そんな中で最近元気が良いのが道の駅に併設された「物産センター」の朝市だ。ほぼ毎日8時30分から農家の朝取り野菜が所狭しと並ぶ。値段は安い。キュウリ4本で100円、ナス4本で100円。安さと新鮮さ、安全・安心がウケているようだ。出荷している人のほとんどが自給的農家だ。退職して退職金と年金とを持ち悠々自適の生活をしながら田畑に手を入れる人。70代だが元気良く「運動とボケ防止のためにやってんだぁ」という人。稀にこだわりの専業農家で、質の良い野菜や果物を提供する人もいる。聞いた話では直売所の売り上げだけで1000万円からを稼ぎ出す農家もいるとか。主に出している農家は100名ほどと聞いている。売り上げは4億に迫る勢いだということだ。純利益がどのぐらいなのか定かではないが、かなりの売り上げ規模と集客力を持った直売所であることに間違いはない。 能勢では始めて「ポランの広場」という有機野菜の流通会社に野菜を供出している農家に出会った。今の日本社会には一方で「安ければ良い」という向きがある。野菜も100円ショップさながらの売り方をする。直売所も「100円市」と呼ばれていたりする。他方で「安全・安心」を求めるならば、それに費やす農家の労力や資本を加味して「まっとうな値段」で売るという向きもある。 「ポランの広場」や「大地を守る会」といった流通サーヴィスの有機野菜は100円市から比べれば高い。例えば、キュウリは500グラムだいたい5本で336円。3倍以上の値段だ。流通のコストや業者のマージンを考えても高い、だろうか?僕はむしろ、100円で売るようなやり方が安く売りすぎているのではないかと思う。朝4時に起きて、水やりをしたり、虫や病気の対策を打ったり、草刈りをしたり、と。百姓だけで食っていこうと思ったらある程度の作付け面積が必要になり、忙しさは増す。そして、作物の生育は計算通りにはいかない。自然や天候相手だ。そんな中で汗水垂らして働いて収穫したキュウリが5本で100円というのは、それこそ「有り得ない」話にも思える。フェアではない、まっとうな値段ではないと僕は思ってしまう。逆に、キュウリ5本で336円(そのうち農家の手取りがどれほどになるのかが大きなポイントだが)というのはフェアな取引の範疇に入るのではないかと思う。 と言っても、ポランに出している農家も「百姓で食っていくのは大変だよ」と言っていた。<食っていくのは大変と言う時に、それは何を指しているんですか?物理的に食べるものはそれこそ売るほどあるんでしょ。子どもの教育費?生活費?>と訪ねると「機械代だ」との返事をもらった。「子どもを高校ぐらいまでは行かせてやって、一定の生活水準を保つような稼ぎを得るためにはある程度の規模が必要になってくる。すると、機械が必要になる。その機械の代金や償却費が一番かかる項目だね」と。 <百姓で食っていくのが大変だという状況が作られてしまっているからねぇ。仕組みとして規模拡大して無理を強いるようになってきてるしね>といった話をすると「これまで自分の足で立つ努力をしてこなかった農家にも問題がある。補助なんかに頼った農業をやってきたから、経営感覚が身に付いていないんだよ」と話してくれた。 経営を考える時の要は販路だ。いくら作っても売れなければ意味がない。売り先をどう確保するか。値段をどう設定するか。生産の現場にいる農家・百姓が割りを食わない流通の仕組みはどうしたら上手くデザインできるのか。そんなことを考えさせられる。そして、農家は日々シビアにそういったことを考えている。 |
|||
| 能勢町 / 棚田が育むもの / 販路はひとつじゃない | |||