column 030902

愛の証とエコ・リュックサック

後藤 彰

  最近、友人に「結婚式は神の前で愛を誓うのだよ。披露宴は、人々にお披露目する会ね」と教えられた。そういった事に疎い僕は、普通に「へーそうかそうか、そうだよね」と感心していました。日本で執り行われる結婚式は神道系か教会系が多いようです。それぞれ、神に誓うのんですね。何をって?
永遠の愛を。
  その際に、指輪が交換されたりします。金だったり銀だったり、ダイヤだったり。
  それは、愛の証ということになるようです。

  ところで、こういった金とか銀とか、ダイヤといったがどうやって生産されているか知っていますか?
  僕は知りませんでした。

  指にはめる程度の小さな素材を生産する裏側では、掘り返された大量の土砂が山積みにされ、洗浄のために使われるシアン化物という毒物が垂れ流されているそうです。それは河川に流れ込み生態系を破壊し、森を破壊します。

  ある素材や製品を1kg取り出すためには様々なプロセスを経ます。「エコロジカル・リュックサック」という指標はその素材1kgのために鉱石や土砂、水その他の自然資源を何kg自然界から移動させたかによって表わされます。その視点から見ると、ある素材はそれ以上の自然資源をリュックに詰めて背負っているようなものなのです。

鋼鉄は21kg、アルミニウムは85kg、再生アルミニウムは3.5kgを背負っていると言います。多くの人が日常的に消費していとも簡単に捨ててしまう缶類などは、予想以上に重いようですね。

さて、愛の証はどうでしょうか?
金は540,000kg
ダイヤモンドは53,000,000kg
54万倍と5300万倍です(『平成15年度版 環境白書』)。想像するのが難しいですね。一個の指輪に対して、同じ重さのものが53万個と5300万個分です。金の結婚指輪1つで約3トンの廃石が出るとも言われています。とにかく膨大な量の自然資源が動かされるのです。さらにその廃石は金属の洗浄のために猛毒のシアン化物を使うために大抵は汚染されていると言います。

「採鉱作業は、世界の河川が運び出すよりも多くの物質を地中から掘り出している。オク・テディというパプアニューギニアの鉱山だけで、実に一日平均20万トンもの廃石が生まれており、日本、オーストラリア、カナダのすべての都市で出される廃棄物量の合計を上回っている。」(『地球白書 2003-2004』: p203)

ヨハネスブルグという南アフリカには金鉱山があります。
金鉱山が発見されてから100年間でヨハネスブルグ周辺は豹変したといいます。

「捨てられた鉱石や岩が平坦な町に淡い黄色の山のように積み上げられ、主に黒人の住む貧しい地域にそびえ立っている。なかには、数百ヘクタールも拡がり、高さが45メートルにも達するものもある。シアン化合物や重金属を含んだほこりが、この山から風に乗って近隣の住宅や学校に運ばれていく。」(『地球白書 2003-2004』: p202)

  大量の廃石や土砂と猛毒のシアン化物。さらに、採鉱には膨大なエネルギーも投入しますから二酸化炭素の排出量も半端ではありません。

  これだけのものが見えないリュックサックに詰め込まれて「愛の証」と言われる指輪に背負われているかもしれません。
「愛の証」はどうやら違う意味で重いようです。その重さを僕は背負えそうにありません。

  こんなことを書くと「何てロマンのないやつだ」「結婚できるのか?」「パートナーが金の指輪を欲しいと言い張ったらどうするの?」と心配されそうですね。
  でも、「証」が金やダイヤの指輪である必然性はないのですから、別の方法を考えれば良いわけですよね。
そこに柔軟性と遊び心が欲しいものです。

あ、そうそう。別に誓いを立てる相手がいるわけではないですよ。
冒頭の友人に「結婚式は挙げたい?」と聞かれて
<全然リアリティがないから想像すら出来ない>と答え、白けさせました。


参考文献
フレイヴィン、クリストファー編著 (2003)『地球白書 2003-2004』エコ・フォーラム21世紀日本語版監修 東京:家の光協会.(特に 第6章「環境の21世紀、錬金術は金属リサイクル」pp.201-235 を参照)
環境省編 (2003)『平成15年版 環境白書』東京:ぎょうせい.



                                                      ©GOTOH Akila 2003-


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